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‥‥‥15 黒字の会社は皆を幸せにする

黒字企業は“正の循環”をしている

 私が最近一番驚いたのは、日産自動車は中古車市場まで価値が上がったということ。これがわかったのは、実家に帰ったときに弟がクルマを買い換えていたからです。

「すごいクルマになったじゃぁないか」
「日産のスカイラインを新車にしたんだ」
「えっ? いくらで?」
「お金、出してないよ。スカイラインが高く売れたから」

 つまりは、日産自動車が絶好調だから、中古車価格も上がり、高く売れようになっているのです。日産車を持っている人たちが次に買い換えをするときに、あまりお金払わなくても、チェンジできるというメリットが生まれているわけです。これはすごい経済効果だといえます。

 日産自動車の企業価値が上がることによって、社員、その家族が幸せになっています。加えて販売会社や関連の部品工場の社員やその家族、さらには日産車のユーザーまでも幸せにしているのです。要するに、しっかりした黒字経営をしている会社は、その“正の循環”をすることによって、関係する人たちをみんな幸せにしているのです。

日産の社員が幸せな理由

 巨額の負債の返済期限を控え、資金繰りのめどが立たなかった日産自動車は仏ルノーに救済を求め、99年3月に資本提携を結びました。同年6月に副社長のカルロスゴーン氏を再建請負人として送り込み、日産自動車のCOO(最高執行責任者)に就任。4カ月間で、「日産リバイバルプラン」をまとめ、人員削減、工場の閉鎖、コストの削減などリストラを実行しました。

 99年〜2000年でリストラの目標を達成し、2001年からはデザイン性を強く出した効果が出て、成長しはじめました。新車の販売が上向きになったのです。そして、2001年3月期では黒字に転換。その後も黒字を続け、優良企業へと変身しました。

 それでは、社員がどう幸せになったことを考えてみましょう。第一に給与です。自動車業界は労働組合が強く、横並びだったのですが、2002月3月の春闘で、V字回復した日産自動車はベアでトヨタ自動車よりも400円多い1,000円で回答。2003月3月ではベアゼロだったトヨタ、ホンダに対し、同じく1,000円で回答しました。

 第二に精神面での幸せです。社員が同窓会に久しぶりに出たときに、カルロスゴーン社長が就任する前の赤字が続き、倒産寸前だった1999年だと、こうなるのではないでしょうか?

「久しぶりだな。お前、どこに勤めているんだ?」
「日産自動車だよ」
「ああ、潰れそうな会社か〜。頑張れよ」

 こういわれるのは、誰でもプライドが傷つきます。
それが今ならば、みんなに次のようにいわれるはずです。

「絶好調の。いい会社に勤めていたんだなぁ」

 そうなると、日産自動車の社員という自信と誇りが大きくなります。

 2003年8月にはゴーン社長が、Jリーグ1部の前期決勝戦の横浜国際総合競技場にたくさんの社員を招待、横浜F・マリノスが優勝を決めました。そもそも儲かっていなければ、企業スポーツは続けられませんし、社員を招待することは不可能です。横浜F・マリノスは、横浜マリノスが横浜フリューゲルスを吸収合併して再生されたもので、全日空、佐藤工業が悪化のために手を引いたあと、日産自動車に任されました。

 当時、日産自動車は赤字だったわけですが、ゴーン社長は企業スポーツを続ける意義をわかっていていたため、簡単には切りませんでした。スポーツの応援を通じて、社員とサポーターが一体になれること、良い成績を出せれば社員のヤル気を高められたり、ブランド力を高められることなどを、ゴーン社長はわかっていたのです。

赤字企業は“負の循環”に入っている

 赤字会社は、“負の循環”に入っていって、みんなが不幸になります。幹部社員は、「儲けるため」の早朝会議や、深夜までの会議にかり出されて、睡眠時間がなくなります。従業員は残業や休日出勤などの諸手当で会社と揉めはじめます。

 優秀な社員は、それを見て退職していきますから、残った社員にしわ寄せが来ます。ヤル気が落ちて、外注を含めてストレスがたまり、会社の文句をいうために、数人で居酒屋で飲むようになります。ストレス解消のために、ムダなお金を使っているわけです。

 社員は山積みの仕事をこなそうと、一生懸命働いてもサービス残業となって、給料は一銭も増えないうえ、家族からは帰宅が遅いと文句をいわれたり、心配されたりします。過酷な労働は、精神にも体にも負担をかけますから、最悪、突然死にいたるのも、考えられないことではありません。そうなると、残された家族は悲惨です。

 よく考えてみれば、たとえば1,000万円しか儲からない会社で給料が1,000万円の幹部社員が2人いたら、どうあがいても儲かるわけがありません。その人たちを社長がリストラしなかったら、彼らがどんなに残業して働いても、黒字には転換できません。社長が金策に走ったり、住宅を抵当に入れて借入れをしたりしても、その場しのぎに過ぎないのです。

 社長をはじめ、みんなが頑張っても、根本的な解決をしなければ好転しません。だから不幸なのです。先に触れた日産自動車はゴーン社長が思い切った大なたを振るい、リストラを実行したことで黒字になり、みんなが幸せになったことと比較すると、その違いは大きいといえます。

参考 カルロスゴーン氏に関する書籍


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